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33年ぶりの「熱海殺人事件」 その2

私が初めて「熱海殺人事件」を観たのは1980年でした。
キャストは風間杜夫 平田満 加藤健一 井上加奈子。
三浦洋一さんが最後につかこうへい事務所の芝居に出演したのは1979年4月の「熱海殺人事件」で、私が初めてつか事務所の舞台を観たのが1979年5月の「いつも心に太陽を」ですから、本当に一足違いで三浦さんには間に合いませんでした。
「ストリッパー物語」や三浦さん版の「熱海」の大阪公演もあったらしいのですが、私が若すぎたこともあって1979年以前の関西公演についてはほとんど知りません。
1975年に「ストリッパー物語」が今はなき日立ホールで上演されたのを、友達のお兄さんが観たという話を聞いたことがあるぐらい。
当時私は、三浦さんの舞台を観ていないということで、若干の引け目を感じていたような気がします。
「三浦の熱海は凄かった」なんて話を見聞きするたびに、ああ、もう少し早く生まれていたなら!東京に住んでいたなら!と悔しく思っていました。
それはきっと、復帰後からのつか芝居のファンが、旧つか事務所のメンバーを観ていたファンに対して抱く感情と、似たようなものだと思います。
でも今思えば、多感な高校時代につか芝居に出会い、1982年の解散までの4年間、数々の作品をあのメンバーで観られたことは、本当にラッキーでした。

で、ようやく今回の「熱海殺人事件」の話。
学生劇団やアマチュア劇団での上演は別にして、つかさんが復帰した1990年頃から、定本での上演はほとんど行われていなかったのでは?と思います。
昔のつかさんは、「一瞬で消え去ってこそ演劇」という考えから、映像に残すことを拒否していたので、当時の映像は観た人の記憶にしか残っていません。
考えが変わったのか、後年の作品はテレビ放送され、つかさんが亡くなった後にも放送されているので、若い世代でも映像で観た人は多いと思います。
なのに“つかブーム”と呼ばれ、一番勢いがあった頃のつか芝居が、「熱海殺人事件」が忘れられてしまうのは淋しすぎる。そう思ってはいましたが、諦めもありました。その潔さが、つかさんの美学なのだからしょうがないと。
だから風間・平田での上演を知ったときは驚天動地です。夢かと思いました(笑)
最後の「熱海」から33年ですよ。お二人とも現役バリバリの演劇人とはいえ、もはや伝説と言っても過言ではない当時の「熱海」を、2015年の今になってまた上演するってどうなのよ?!という気持ちも正直なくはなかったです。
でもこの公演は、つかさんの愛娘・愛原実花さんがハナ子を演じたい!と強く願ったことから始まったと聞き、若い世代へつかスピリットを伝えるための公演でもあるのかなと思いました。
そのための風間・平田のキャスティングだし、演出はかつてつか芝居のコピーをやらせたらニッポンイチ!と言われていたいのうえひでのりさん、これはもう単純に観たいでしょ!
おまけに劇場はかつて聖地と呼ばれた紀伊國屋ホール。不安よりも期待が上回って当然ですよね。
9000円の入場料だけはつか芝居らしくなかったけれど、つかさん亡き今、あの頃の「熱海殺人事件」を上演することは、とても意味のあることに思えました。

「熱海殺人事件」は、私にとっては風間版伝兵衛がスタンダードで、風間さん以外のバージョンは、どうにも違和感がありました。
いや、風間さん以外というより、つかさんが復帰後に演出した「熱海」、と言ったほうが正確ですね。
自分にとって「熱海」は、「地方出身者の哀切な東京物語」だったので、部長や熊田の物語が協調されたり、取り調べ室を離れて展開したりする「熱海」も、それはそれで面白くは観たけれど、これはもう自分が好きだった「熱海」とは別物だなという思いがありました。
今回は上演前から「かつての熱海を」とインタビュー等で話されていたので、定本を基にしての上演だろうと予想はしていましたが、本当にセリフと展開はほとんど変わっていなかったように思います。
削られたセリフや場面はあるけれど、設定の変更や付け足しはなく、「私が好きだった熱海がまた観れた~!」という思いで胸がいっぱいになりました。

昔は気付かなかったけれど、本当にいろんな見方ができるお芝居だなあと思います。
骨格がしっかりしてるから、どんなアレンジをしても揺るがない面白さがありますが、やはり定本は無駄がないぶん、ストレートにガツンときますね。
国家権力による弱者へのパワハラとか事件の捏造とか社会的な見方もできるし、仮面をかぶって現代を生きる私たちを戯画化したようでもあり、正統な青春の悲劇を描いた物語のようでもある。
13階段は大人への階段で死刑は少年時代との決別かもしれない。そう思うと金太郎の19歳という年齢設定が絶妙に思えます。
青空の下での相撲大会、イガグリ頭の金太郎、「金ちゃん頑張らんね~!」と叫ぶアイ子、海辺の田舎町に吹き渡る風。そんな風景がパーっと頭の中に浮かび上がるんですよね。たまらなく切ないです。
そして、熱海。昔のアイちゃんはもういない。目の前にいるのは「百姓!」と罵る見知らぬ大人の女。幼く身勝手だけれど哀切な殺意。バックに流れる大津あきらさんのメロディー。
私の脳内で二人のドラマがどんどん膨らんで、もう涙腺崩壊です。また、愛原さんと中尾明慶さん、若い二人の真っすぐな演技と本物の若さで切なさ倍増でした。

今回、いろんな人の感想を読んでいて気になったのが、「アイ子が売春をしていた」という設定がないのは、カットしたからだと思っている若い人(たぶん)が複数いたことです。「だから金太郎の殺意が弱く感じる」と。
私の記憶ではアイ子の風俗嬢設定が初めて登場したのは映画版「熱海殺人事件」でした。同じ頃ソウル版も観たけど全編韓国語での上演だったのでこの時はどうだったのかはわかりません。
映画版の監督は高橋和男さんですが、撮影前につかさんによる口だての稽古もあったはず。婦警の名前が水野朋子になったのも、この映画からだと思います。
この時は木村伝兵衛(映画では二階堂)と熊田留吉は異母兄弟という設定で、熊田を追って富山から上京する女性も登場していました。
当時は「映画だからわかりやすく派手にしたのかな」程度に思っていましたが、今観ると、演劇界復帰後の「熱海殺人事件」の原点という感じですよね。
この映画が、変わり続けた、定本ではない「熱海殺人事件」の最初のバージョンだと思うと興味深いです。
それはともかく、演劇界復帰後の「熱海」第1作目となった塩見三省版でも、アイ子が風俗嬢だったという設定は引き継がれ、その後はそれが定番になったようです。
ですから、1982年までの「熱海殺人事件」にはアイ子の風俗嬢設定はありません。今回カットされたのではなく、もともとなかったということです。
さっきも書きましたが、私は元の芝居に愛着を持っていたので、1990年以降の金太郎とアイ子の設定にはずっと馴染めないままでした。
あれこれ付け足さなくても、私の中では十分金太郎の殺意は成立していたし、二人の心情は胸に突き刺さりました。逆に売春という具体的な情報を得ることで余白が少なくなり、想像の範囲が狭まってしまったようで、残念に思っていました。
もっとも、82年の段階ですでに古く感じる部分はありましたから、つかさんが時代と役者に合わせて、どんどん設定や内容を変えていったのも、自然なことだったと思います。
ただ、かつてのつか事務所ファンにしてみれば、「あれ?そっち?」と戸惑う方向だったというだけで。
これについて語ればたぶん長くなるので、機会があれば改めて書きますね。

効果音とともにポーズを決める演出は、昔はなかった。いかにもいのうえさんっぽいですね。セットがあることと、映像を使っているところも昔と違う部分です。
あと、今の人にはわかりにくい台詞や場面は削ったり、説明が付け加えられていたりもしました。
つかさんは固有名詞の選び方が天才的にうまいし可笑しいので、変えて欲しくなかったものもありますが、今の時代には伝わらないと判断されたのでしょうね。「イヨマンテ」とか「川地民夫」とか好きだったんだけどなあ。(ちなみに「イヨマンテで出てこい」は「お魚くわえて出てこい」になり、川地民夫さんの場面はカットされていました)
あと、音楽はかなり変わっていましたね。マイペースの「東京」は昔はもっと延々と流れていた気がするけど、今回は短めでした。「夏子ひとり」も、セリフとの絡み方が少し違っていたように思います。曲自体変わっていたところも多かったですが、その場の空気に相応しい曲が選ばれていたので、私は気にはなりませんでした。
今はつか的な演出が当たり前になっていますが、当時あんな演出をする人は他にいなかった。新感線ぽいと言われている演出も、ルーツはつか演出だったりします。だから、今回、風間さんと平田さんの演技に関してはほとんど昔のままと言っていいと思うのですが、「いかにもいのうえさんらしい演出」とブログに感想を書いている人がいたのは面白いなあと思いました。時代は流れているのですよね。

木村伝兵衛は誰が演じてもカッコよく見える役ではありますが、やっぱり風間さん凄いわ~。別格だわ。
当時はテンションの高さとともにその甘さが魅力でしたが、年齢を重ねていつのまにか風間さんは「くわえ煙草伝兵衛」の名ににふさわしい渋みを獲得していました。
「熱海殺人事件」とタイトルが出る場面で、煙草をくゆらす姿のカッコいいこと!シビレる~!
包容力とか説得力とか、ベテランならではの魅力が加わって、間違いなく昔より深みが増していました。もしかしたら昔より良かったかも?!なんて思えるぐらい素晴らしかったです。
平田さんは安定していたなあ。見た目も演技も33年前とほとんど変わらないように見えるって凄すぎる。当時も平田満といえばつか芝居を象徴する役者でしたが、今回もつか芝居の土台をしっかり支えているのは平田さんだなあと実感した次第です。ジャニーズとか2.5次元出身とかイケメン揃いが演じる今のつか作品もいいのですが、重心の低い演技をする平田さんのような役者がいないのが、決定的な弱さじゃないかなあと、お節介ながら思ったりします。
愛原さん、登場したときの感想は「宝塚だなあ」 でもスタイルはいいし動きはキレイだし台詞もはっきり届くし何より丁寧に演じているところがいいなと思いました。お父さんの作品を魂を込めて演じている姿は観ていて気持ちよかったです。
中尾さんも、大先輩二人に必死に食らいついてゆく姿が、大山金太郎と重なってびっくりするほど良かったです。若い俳優ならみんな演じたいんじゃないかな、この役。偉そうな言い方で申し訳ないですが、将来、この役を演じたことがすごくプラスになるような気がします。

翻弄され気持ちよく高みに連れていかれ、高揚感とともに劇場を後にする。そんな体験は久しぶりでした。
今観たら昔のようには笑えないかもしれない、感動もしないかもしれない。当時熱狂していたのは時代の空気のせい?良く思えるのは思い出補正ってやつ?等々、観る前はネガティブなことを考えないでもなかったのですが、すべて杞憂でした。定本の「熱海殺人事件」は今観ても傑作だったし、笑えたし、つか芝居の風間さんや平田さんは特別でした。
「熱海」って、当時のつかさんの稽古風景が元になっているんでしょうね。当時は考えたこともなかったですが、「つかこうへい正伝」を読むと、それがよくわかります。パンフレットの座談会で風間さんもチラリと触れていますが、酷い言葉で役者を追い込み挑発し、心の奥の痛いところまでさらけ出させて、最後には救い上げる。本当につかさんは伝兵衛そのものです。自分で階段から落としておいて、「上がってこいヤス!」と涙ながらに手を差し伸べる銀ちゃんもまた、つかさんそのものなのでしょう(笑)

まだ書きたいことはありますが、またまた長くなってしまったので、そろそろ終わります。
「その3」もそのうち書くつもりでいますが、いつになるかな~。
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プロフィール

takkin

  • Author:takkin
  • 別名いるか(歌手のイルカから。昔似ていたので)
    RICOと名乗るときもあり。
    大阪在住の映画・演劇好き。
    高校時代から風間杜夫氏の大ファン。
    非公認ファンサイト「風の杜」の管理人です。
    射手座でO型。動物占いは狼。
    自画像、綺麗に描きすぎ(^^;)反省。
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